超伝導 2014 1 1
書名 新しい超伝導入門
著者 山路 達也 PHPサイエンスワールド新書
日本の新しい成長産業に、
「超伝導」は、どうでしょうか。
この分野ならば、競争相手が少なく、
日本企業の得意分野です。
さて、超伝導(超電導)とは、何か。
それは、ある温度まで冷やすと、
電気抵抗がゼロになってしまう現象です。
オランダの物理学者であるオンネスは、
水銀を4.2K(約マイナス269度)まで冷やすと、
いきなり電気抵抗がゼロになってしまうことを発見したのです。
どうして、これが画期的なのか。
電気にとって、電気抵抗は、大敵です。
電気が流れる「導体」には、抵抗がありますので、
その分だけ、せっかく作った電気エネルギーが熱に変わってしまうのです。
要するに、電気は、電線の中を進む時、熱となって失われていくのです。
この熱対策は、悩みの種でしょう。
たとえば、パソコンの心臓部であるCPUは、
冷却しなければ、目玉焼きができるほど高温になってしまいます。
話がそれましたが、電気は、「地産地消」が望ましいのです。
つまり、地元で取れた電力を地元で消費することが望ましいのです。
そうなると、都市部は、困ってしまうのではないか。
そこで、ひとつの解決方法があるのです。
私が子供の頃、
50万ボルトという、途方もない高電圧の送電線を作るという計画に、
地元では、反対運動が起きたことがありました。
これほどの高電圧でも、
「健康被害はない。安全だ」と説明があったにもかかわらず、
反対運動がありました。
電力を遠くまで送るには、「超高電圧」にするしかないのです。
高校の授業で習ったと思いますが、
電圧が高ければ高いほど、送電損失が少なくなります。
最近は、50万ボルトどころか、
ちょっと怖い感じがしますが、100万ボルトによる送電も計画されています。
やがて、100万ボルトの送電線が出現するかもしれません。
50万ボルトや100万ボルトの「超高電圧」は、
本当に、健康被害がないのか、気になるところですが、
こうした悩みを解消できるのが、超伝導です。
超伝導の電線、超伝導ケーブルを使えば、
電気抵抗はありませんから、
せっかく作った電気エネルギーが熱に変わって消えていくことはありません。
問題は、マイナス269度やマイナス250度などという、
超低温をどうやって作り、どうやって維持するかでしょう。
しかし、最近は、冷却装置が、
小型化、薄型化していますので、超伝導が現実のものになりつつあります。
こうした小型化・薄型化の恩恵は大きく、
製品のデザインを損なうことなく、冷却装置を搭載できるようになりますので、
将来は、身近な製品にも、超伝導を利用した製品が出回るでしょう。
つまり、輸送機や家庭用品にも、超伝導が利用されいくでしょう。
そうなると、市場規模は、数兆円の規模になるでしょう。
理屈の上では、超伝導においては、
電気抵抗がゼロなので、いったん流された電流は、
永久に流れ続けることになります。
ここから連想するものは、
蓄電池などが思いつくでしょう。
ところで、今日は、元旦です。
初夢は見たでしょうか。
ここで、ひとつSF(空想科学)を提供しましょう。
時々、空中に、まるで見えないレールが引いてあるように、
スルスルと飛ぶ飛行物体がありますが、
あれは、超伝導技術を利用しています。
いつか、常温に近い超伝導という夢が、
正夢(現実)になりますように祈ります。
超伝導技術が確立しない限り、
人類は、電気を完璧にコントロールしたとは言えないのです。
まだまだ、人類にとって、電気は発展途上の分野です。
超伝導技術が確立した時、人類は、全く別の世界を見ることになるでしょう。